どっとこうMOTTO

電子書籍『After』(全2巻),BookLive!(http://booklive.jp/product/index/title_id/116980/vol_no/001),紀伊國屋書店(https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0012917)などで好評発売中。

どっとこう17周年

昨日になってしまったけど,どっとこうが生まれて17周年目となりました。しばらく遠ざかっていた時期もあるし,見てお分かりのとおりそんな感じです。今後,二川項としての活動をどうしようかと考えている間にあっという間に,というのが正直なところ。

ほかのソーシャルメディアの使い方との整理もできていないし,まだ結論は出し切れていない。だけど,このどっとこぶろぐも細いながらも続けたい。更新を一日に数回は難しくても,年に1回以上はね(笑)。◯周年というのは再起動するには良いタイミングかと。

物語を紡ぐように日本を,世界を見つめていければと思う。

とだけ書いておこう。三度寝にならないように。

おやすみ,どっとこぶろぐ

「どっとこぶろぐ」を読んでいただきありがとうございます.
突然ではありますが,2003年から続いてまいりました
この「どっとこぶろぐ」の更新を休止することにしました.


最近の「どっとこぶろぐ」は,はっきり言ってしまえば,
自分のためだけに書いているような気がしてならないのです.
少なくとも,あなたに向かって書いていない.
これを読んであなたにとって何か役に立つとは正直,思えない.


自分のためと言いながらも,自分にしか分からないような
極端なネタを出すこともできず,非常に中途半端な印象を抱いてしまう*1
だったら,いっそのこと,公開しない方が良いのではないか,
そう思うに至りました.


また,作品紹介をするときには特に,時間をかけて原稿を書いています.
時には2週間経っても書き終わらないこともあります.
このようなスタイルもまた,ブログには向いていません.
二川項にはブログは似合わないのです.少なくとも,今のコンセプトでは.


そして,僕が購読しているメールマガジンの一つに,
「天命の暗号*2」があります.
毎月/毎週,目標を教えてくれるメールマガジンです.


今週の目標は「即断」.


僕の思いに反して,このブログを楽しみにしていたとしたら,
それは大変申し訳なく思っています.ですが,お許しください.


本当はここでずばっと終わりにしたいのですが,
あと1回だけ,現在休止中の本家サイト「どっとこう」と私の
今後について話をさせてください.
本家をどうするかも決めていますが,発表まで少し時間が必要なのです.

*1:例えば,「好きな作品は語りにくい」ってこと. id:futagawakou:20070831

*2:id:futagawakou:20061126

おとぎ銃士 赤ずきん 〜魔女の忘れもの〜

おとぎ銃士 赤ずきん」の小説版第2弾.
今回は前回*1と違って,良くも悪く(?)も
視座の不安定さは感じられない.


とはいえ,う〜ん.
登場人物が完全に二手に分かれる構成はちょっと….
なんとなく散漫で分断された印象を持ってしまう.


戦闘美少女とかいろいろあるんだろうけれど,
そしてこの本の前提を全て崩してしまうんだけど,
冒険なんかしなくて良いから.


鈴風家とか学校で,はちゃめちゃをしている方が
個人的には好きなんだけどなあ.
まあ,掛け値なしで好みの問題なんだけどね.



*1:id:futagawakou:20061103

生き延びるためのラカン


語りが学術書っぽくない口語調だし,
引用の元ネタが書かれていない場合が多いんだけど,
さりげなく索引や著書リストを用意しているのはありがたい.
教科書・入門書としての使い勝手はなかなか.


ただ,ラカンの知識のない僕が,
内容の正確さについて論じたりするのは止めておく.そもそもできない.
それでもひじょ〜に参考になる点が多かった.


さて,この本の扉には,

「心の闇」を詮索するヒマがあったらラカンを読め!そうすれば世界の見方が変わってくる!

って書いてある.これは本当だなあ,と思ってしまった.
以下、どっとこう総見*1でのあれこれをばっさり斬ってもらいましょう.


Q.どうして「好きになった作品は語りにくい」*2のですか?


A.

一般的に、男性は自分の立ち位置をしっかり定めてからでないと、何事も享楽できない。*3


【二川項のコメント】
作品を語る前提としての,(「日常」の)自分の立ち位置を
説明するのは難しいよね,ってことなのか.


立ち位置が決まらないと,玉乗りしているみたいで,
どうも落ち着かない感覚になってしまう.


Q.『おおきく振りかぶって*4についてなんかいろいろ書いてあったけど,
結局はどういうことだったんですか?


A.

報われない、トラウマ的環境にある主人公が、同じく報われない他者を自己犠牲によって救済することで、最終的に自分も報われる。象徴界を介して演じられる「救済」の反復が、それこそ反復によって色褪せてしまわないのは、僕たち(あるいは個人)が、いつでも自分のことを「努力が報われない不遇な主人公」としてイメージすることができるかもしれない。*5


【二川項のコメント】
最初からこれを引用すれば良かったと思うくらい*6
なんか無茶苦茶恥ずかしい.


ついでに,主役級の2人について言及していたコメント.
あれも,結局2人に自分の感情が投影されています*7
って告白してるようなもんだよね.


Q.録画したのに見ない言い訳として,「見るのが怖い」*8って書いてあったんですけど,
そんなことはあるのですか?


A.

鏡像に自己イメージを含めて投影し、同一化を試み、しかし同一化が進めば進むほど、自己の支配権、所有権を鏡像に奪われてしまうという不安や被害感も高まっていく.*9


【二川項のコメント】
「主人と奴隷の弁証法」の説明より.
参考にする登場人物が先に成功してしまうかと思うと,不安になるのは,事実.
話の最後で彼女ができるとイマイチ評価が高くならないというのは,
この変形バージョンだろう.


Q.「どっとこう総見」のアプローチについてどう思いますか?


A.

「自己」イメージに基づく「共感」なんて、あまりあてにならないんだ。それは他人の中に自分自身のイメージを発見するだけの、ナルシシックな営みなんだから。


【二川項のコメント】
「どっとこう総見」は,(いろいろ条件はあるけど)キャラクターを使って,
人生のトレーニングができないだろうか,ということを考えている.
自分一人で進めていくという点では,あのナルシスト*10の匂いがすると
言われているジムのトレーニングに似ているのかもしれない.


でも,「どっとこう総見」で一番気をつけたいと思っているのは,
参考にする登場人物を見て,満足してしまうこと.


そして,満足できないようにする,つまり
自分のモノにするためのトリガーになるのが
「参考にする他者」との「差異」ではないかと思う*11


「どっとこう総見」自体,まだまとまっていないに等しい.
まだまだ考える余地はいろいろありそう.


…「どっとこう総見」を知らない人にはさっぱり分からないような
内容でごめんなさい.この本の魅力について,ひと言で言えば,再度引用するけど,

「心の闇」を詮索するヒマがあったらラカンを読め!そうすれば世界の見方が変わってくる!

ってことだと思う.


お勧め度:★★★★★


生き延びるためのラカン (木星叢書)

生き延びるためのラカン (木星叢書)

*1:左の「カテゴリ別一覧」から「どっとこう総見」を選択すると,大体の傾向がわかる…はず

*2:id:futagawakou:20070818

*3:p162より引用

*4:id:futagawakou:20070830

*5:p105より引用

*6:さすがスポーツ心理学.(違うか?)あ,でも単行本の3巻の裏カバーに似た表記があるか.

*7:「2人に同一化しています」ではないことに注意.

*8:id:futagawakou:20061229

*9:p95より引用

*10:引用は省略するけど,本文にナルシシズムについての解説がある.

*11:本文中の表現で言えば,「父」「第三者」にあたるようなものではないだろうか.ちなみに,「どっとこう総見」では,同じ人間(登場人物)は一人として存在していない(ただし,オンラインゲームなどで自分の分身を自分で作った場合を除く),という発想を根底に持っている.

おおきく振りかぶって

この作品にはそもそも期待していなかった*1
自分の今までの経験上,テーマである野球にあまり良いイメージを持てないでいた.
はっきり言ってしまえば,いい思い出がなかったからだ.
定点観測として,いろんな作品をウォッチして全体の傾向を掴む,
というプロジェクトの一環で見ただけのはずだった.


とはいうものの,不思議なことに,この作品は
なんと外部のあの手この手を使って「私を見て(読んで)!」って,
語りかけてきたのだ.


某友人はこの作品のために雑誌を買っているらしい.
秋葉原有明*2の広告も見た.
仕事の絡みでチェックしていたブログでも
ウィークリーまぐまぐでも薦められていた.
いつも通っている整骨院にも置いてあった.
しかも,別の患者さんが良いと言っていたのを聞いた,など.


こんなに同時多発的に,
しかも他人に薦められれば見ない(読まない)わけにはいかない.
で,見たら…かなり良かったというわけだ*3


僕の買った単行本の8巻の帯には「高校時代をやり直したくなる」って書いてあった.
この作品の持つ,比較的淡くて,自然なトーンも手伝ってか,
野球はおろか,運動部でもなかったのに,
どこか,昔を彷彿してしまうところがある.
抽象的でデフォルメされた「何でもできそうな昔」を.


そのまま気持ちいいノスタルジーの中に居てもいいんだけど,
どんなにもがいても高校時代をやり直すことはできない.
でも,この作品は,気づこうとした人には気づける,
意外にしたたかな仕掛けがなされている.


百枝監督だ.


彼女が何歳かは知らないけれど,少なくとも高校生ではないないだろう.
彼女は,ノスタルジーの中にはいない.
昼間は一生懸命に働いて,その金を部活に注ぎ込む.
間違いなく,彼女は「今」を生きている.


そして,改めてこの作品に自分の「今」を重ねてみると,
この作品はいろいろなことを教えてくれる.


アニメ版の1回目を見て思ったこと.
ついつい,やや独特な,主役の三橋君*4に目が行くかと思いきや,
そうではなく,阿部君への怒りだった.
「こいつにはいつか天罰が下るはず」.


だけど,読み進んでいくと,すぐにその反応は間違っていたことが分かった.
阿部君の反応も変わった.僕の考えも変わった.


自分が,はじめの阿部君と同じ反応をしようとしていたことに,
あるとき,ふと,気がついたのだ.
そして,こう対応された相手はいい気はしないだろうとも.
阿部君は,三橋君に尽くすことにした.
解決策は,敵対するのではなく,そういうことなんだろう.


と,書いたものの,この2人は,形こそ違うけれど,
互いに同じ問題を抱えていたのではないかと思う.
原作の言葉を借りれば,

ちゃんとこっちを向いてほしかったんだ*5


それでもなお彼らは野球をやり続けていた.
その根本にあるのは,前述の『ナチュラル』でも言っていた,これだろう.


野球が好きだ


このキャッチフレーズは,有明で見たポスターに書かれていたものだ.*6
その時,急になんか恥ずかしくなってしまった.
それは結局のところ,彼らの主戦場を自分に置き換えて,


仕事が好きだ


と,堂々と,本気で胸を張って言えていないからなのではないかと思う.
正々堂々発言できる彼ら(作品)はすごい.


どんなにいじめられたり,ダメだと思っても,
ひたすら練習し続けられるというのも,
相手してもらえなくても続けたいと思うのも,
全精力をそこに注ぎ込めるのも,
好きだからこそできることだ.


この作品をひと言で言えば,6巻のカバー裏表紙*7に書いてあったけど,まさに

野球が、こんなにドキドキはらはらするこんなスポーツだったなんて!

ということに尽きると思う.


おおきく振りかぶって (1)

おおきく振りかぶって (1)


おおきく振りかぶって 1 [DVD]

おおきく振りかぶって 1 [DVD]

*1:逆説的だけど,好評な作品は「そもそも期待していなかった」サプライズな作品が多い.

*2:りんかい線国際展示場駅からビックサイトに行く途中には,TBS系のアニメ広告が掲示されているゾーンがある

*3:そして,好評な作品は,突然出てきたように見えるが,何かに引き寄せられるかのように,自分とその作品を結ぶ線が見えることが結構ある.それとも,線が見えたから好評になったのか.―どちらにしても,ちょっと神秘的な気がする.

*4:お恥ずかしながら,自分が三橋君に似ている部分があるのではないだろうかと考えることはある.全体的に似ているとは思わないけど,

*5:単行本3巻p93より引用

*6:夏に見たときにはこう書いてあった.春にも見たのだが,その時には「ぼくらの夏が始まる」だったような気がする

*7:この作品のカバー裏表紙をまじまじと見ると露骨なことが書いてあったりして結構恥ずかしい.ところで,最近発売されたの単行本にはカバーを外すと補足説明があるのだが,これがなかなか興味深い.必見.

夏の連休の記事では,いろいろ書いた.
史上最強の弟子ケンイチ*1』,『OVER DRIVE*2』,
(その中で引用した『アイシールド21』)ときて,
なぜか『ナチュラル*3』.


そこで,そう来たら,それじゃないだろ!これだろ!*4
思わず突っ込みたくなった方がいるかしれない.
というわけで,「これ」についてコメントを.

*1:id:futagawakou:20070815#p2

*2:id:futagawakou:20070816#p2

*3:id:futagawakou:20070817

*4:今回の作品も含め,どの作品も高校1年生が入学するようなところから始まる,学業ではないアクティビティがテーマの作品だ.いわゆる「部活モノ」(id:futagawakou:20070818).それぞれの部活(部があるもの)が設立間もなく,先輩が少ないのも共通点.主人公の傾向(ポジション)もなんとなく似ている