どっとこうMOTTO

電子書籍『After』(全2巻),BookLive!(http://booklive.jp/product/index/title_id/116980/vol_no/001),紀伊國屋書店(https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0012917)などで好評発売中。

ICO

主人公と共有する感覚


ICO
(2001年/ソニー・コンピュータエンタテインメントPS2


ICO』には,実は海外版も含め,いろいろな版があるようだけど,僕がプレイした
のは,PlayStation2のベスト版.たぶん,最後に発売された版なんじゃないかと思う.
プレイ時間は約15時間(しかも2周!)と,PS2のゲームにしては,非常に短い.かと
いって,内容がないわけでもないし,ストーリーがないわけでもない.


ジャンルは,アクションゲーム.僕の分類でいけば,「主人公道具型」(主人公より
もプレイヤーの意思を最大化するゲーム).実際にやってみると,「謎解き」や「頭
の体操」みたいだ.ただのパズルゲームではなくて,恐怖を感じられるゲームだ.そ
の恐怖は,ホラーやグロテスク系みたいな見た目の怖さじゃない.ここで落ちたら死
ぬかもしれないというような,自分の感覚や操作の結果が怖いのだ.


■感覚のゲーム■

このゲームの,触覚への訴えは,すごい.一番特徴的なのは,R1ボタンでの,手をつ
なぐ/離すという行為.手をつないでいると,コントローラーが振動し続ける.この
振動で手をつないでいると実感できる.その中でも,ジャンプしたヨルダの手をつか
んで,引き上げる場面が何度かあるけど,ヨルダの手をつないだ瞬間の振動は,うま
く引き上げられるだろうかと,どきどきする.


音楽の使い方も実に美しい.ただでさえプレイ時間が短いんだけど,音楽が流れてい
る時間はもっと短い.音楽自体の出来も素晴らしい.にもかかわらず,あまり流して
いない.これが,手をつないだときに伝わる振動や,走っているときに吐く息が気に
なったりと,よりリアルさを醸し出しているのだ.選択と集中は間違いなくいい方向
に転んでいる.贅沢なゲームだと思う.


■設定に意味はあるのか?■

設定に関していえば,壊滅的とまではいわないが,プレイをしていてよくわからない
個所がたくさんあるような気がする.なぜイコに角が生えていたのか等,わかったよ
うでいて,わからないところがたくさんあるのがこのゲームである.


けど,その答えを知ったからといって,このゲームがより良くなるかといわれると,
そうではないのではないと思う.僕らは,本筋に意味のあまりないアイテムコレクシ
ョンのような量的な部分を知ることに,力を使いすぎていたのではないかと,反省し
てしまう.


ひとつだけ.ゲーム的な部分を付加しようとした部分は,若干失敗しているかなと思
う.魔女の言葉は1周目でわかるのに,ヨルダの言葉は2周目でないとわからないとい
うのはおかしい.城の構造が出来すぎている,というのはゲームの禁句かな.このあ
たりがパズルゲームっぽく感じてしまう.これはひょっとして,魔女はどこかで,イ
コに先に進んでもらいたいと思っているのではないか,とも考えられなくはない.


このゲームは,プレイヤーがプレイする感覚と主人公の感覚がダイレクトにつなげて
みせたことによって,成り立つエンターテインメントである.「主人公道具型」ゲー
ムこそが,主人公とプレイヤーの感覚を一致させる,究極の同一化のゲームなのでは
ないかと思いなおした.


■評価■
 総合評価:★★★★★☆
ストーリー:★★★☆☆☆
 システム:★★★★★☆
   音楽:★★★★★★
その他私見:★★★★★☆


ICOは,シンプルながらも,ゲームらしい体験をさせてくれる,まっすぐなゲームだ.
最近は「主人公型」ゲーム(プレイヤーよりも主人公の意思を最大化するゲーム)や
RPGみたいに感情のゲームばかりやっていると,感覚を忘れてしまいそうだ.そうい
うときにプレイしてみると,ゲームの技量を問わないこともあって,感覚や身体の大
切さを率直に教えてくれる.


※星一覧表
  ☆☆☆☆☆☆ F:廃盤ものでしょう
  ★☆☆☆☆☆ E:やるのが理解できない
  ★★☆☆☆☆ D:やるなら止めはしない
  ★★★☆☆☆ C:暇ならおすすめ
  ★★★★☆☆ B:ゲーム好きならおすすめ
  ★★★★★☆ A:ゲーム初心者でもおすすめ
  ★★★★★★ S:国民の第四の義務
※この評価は,私個人のものであり,客観的な基準があるわけではありません.