どっとこうMOTTO

電子書籍『After』(全2巻),BookLive!(http://booklive.jp/product/index/title_id/116980/vol_no/001),紀伊國屋書店(https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0012917)などで好評発売中。

ブレイブ ストーリー

おまえはこの映画に何をしに来たんだ?
評価:★★★★☆☆(B:映画好きならおすすめ)


■はじめに
公開前にメリットを使ってみたり,Macを持ってみたりで
メディアの露出も激しいなあ〜と思っていた.
それにこの主人公のタイプや物語設定は(もう分かっていると思うけど)
ストライクゾーンだし,見逃すはずがない.


さて,感想.の前にちょっと注釈.
原作は読んでません.映画だけから判断してます.
そのため,小説には当てはまらない部分があるかもしれません.
あらかじめご了承ください.


宮部みゆき原作でフジテレビとGONZOワーナー・ブラザーズがタッグを組んだ作品.
これがつまらないはずがない.
それに応えるべく、いろんな意味で予想を裏切らない出来.
期待すれば面白いし,疑りながら見れば,それなり.


疑り深い人ほど,ぜひパンフレットは買った方がいい.
原作者である宮部みゆきさんのコメントを読むと,妙に納得する.
穿った見方をほどいてくれるのに助けてくれるはず.


■見る前からわかってる!?
この話,見逃すはずがない,と書いたけれど,
キャッチコピーが「これは,ボクの勇気のハナシ」,と
後で振り返っているイメージがして,そこも気になっていた.


(ここから先はちょっとネタバレありです)
このキャッチの意味することろは,
他でもない彼自身の経験であることを強調するとともに,
彼自身がエンディングを迎えられていることを指し示している,
ということだろう.


そうやってみると,あまり評判のよくないらしいあのメリットのCMも,
単に評判云々の問題ではなく,それ自体がネタバレなのであり,
エンディングがそれなりに見通せてしまうのである.


予想を裏切らない,というのはまあ,そういうことであって,
これだけのビック・ネームが揃ったら冒険はできないだろうし,
それを求めてもいないのだろう.よくわかっていらっしゃる.


RPG的,ファンタジー的
あのエンディングに対しては,そこまで奇跡を起こす必要があったのか,
<ヴィジョン>世界で死んだ彼*1が,普通に、
しかも願いをかなえられてで登場するのを見ると,
この作品が言われている,ゲーム的,RPG的であることの
意味を考えさせられてしまう.


別世界での活躍がひいては現実世界にも波及する…
そういうことを暗示しているようで,作品の方向性からしても,
ちょっと違うのではないかと思う*2
予定調和の期待に応えるのもいいけれど,そこのところが切り離されていたほうが,
良かったのではないだろうか.


話は変わって,世界律は,今でいうところのオンラインRPGに似ている.
オンラインRPGの世界は,自分が規定したキャラクターを操作するので、
基本的に<現実>世界をその世界に持ち込むことになる.
そのオンラインRPGでのマナーというか規律というか,
そういうものの抱える問題点も描いているようで興味深い.


このハナシは,RPG的であるだけではなく,いわゆるファンタジーの物語である.
ワタルやミツルはもちろんのこと,そこに住んでいるほとんどの
キャラクターも豊かに描かれている.


ただ,奇しくも宮部さんがファンであった「幻想水滸伝」と同様*3に,
「全て」の人がそれぞれの意志を持って生きている,
そう言い切れるだろうか?僕にはそうは思えない.
そこの境地まで行けなかった非常に残念.


■最大の死角?
最後にこの作品への最大の疑問を.
ワタルは本当に勇気がなかったのか.


彼は確かに,勇気のないキャラクターとして表現されているのだけど,
はじめの方のシーンでケンカの中に割ってみたりする時点で,
それをウリにするのはちょっと違うのではないだろうか.


ワタルがワールドカップを応援するCMも,それはそうなのかもしれないけれど,
彼の売り込みのポジションから言えば,適切ではなかったのではないだろうか.


ヴィジョンでは若干勇気のないシーンがあるが,
それは自分がその場にいたらどうなるのだろうか,ということを考えれば,
勇気のあるシーンではないかもしれないが,
彼が勇気がゼロと評されるほどのことではないだろう.


なんか彼*4にはだまされたような気がしてならない.


■最後に
ややネガティブなコメントが多くなってしまったけれど*5
見るに耐えない作品では決してない.
この作品を面白いかどうかを判断するのは,
誰でもない,その映画を見ている一人一人だ.
どの作品でもそうなんだけど,(悪い意味ではなく)特にそう感じる一作だ.
いや,どう感じるかが問われているのだろう.


公式サイト
http://www.bravestory.net/

*1:キャラクターの代理としての彼ではない

*2:彼らに不幸なままでいてほしい,という意味ではない.

*3:id:futagawakou:20030525

*4:この作品だけではないが,この手のいわゆる弱い系のキャラはなぜか「おせっかい」で「お人好し」が多い気がする.なぜだろう?「おせっかい」というのは自発的な行動だ.弱い=消極的というわけではないけれど.弱いというのはいったいどういうことなのだろう?

*5:これはストライクゾーンだからという側面もある