どっとこうMOTTO

電子書籍『After』(全2巻),BookLive!(http://booklive.jp/product/index/title_id/116980/vol_no/001),紀伊國屋書店(https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0012917)などで好評発売中。

好きになった作品は語りにくい

ここでは,いろいろな作品について語ることを多くしているが,
好きな作品であればあるほど,語りにくい作品もある*1


働いている会社のある営業の方が言っていた.
営業は歴史小説を好む人が多いのだ,と.
それは営業が歴史小説の舞台と似ているからだという.


僕は営業ではないけれど,
何となく分かるような気がする.


僕はこのネットでいろいろ書き始めたときから,
ゲーム,とりわけRPGについて語っていたから,
取り上げる話はファンタジー系が中心だった.


だけど,最近はそうではないような気がしている.
もちろん,ゲームに取り組む時間が少なくなっていて,
その代わりに隣のジャンルであるアニメ作品を中心に
取り上げているのだけど,それでも,ファンタジー系の
魅力は色褪せてきているような気がする.


その代わりに台頭しているのが,いわゆる「部活モノ」だ.
本当にこの手の作品に弱くなった*2ような気がしている.


とはいうものの,「部活モノ」なら何でも良いかというと,そうでもない.
営業の舞台が歴史小説と似ているというのと同じレベルで,
自分と同種の問題(とその解決)が描かれているから,好きなのだ.
今,自分の抱えている問題のいくつかが,
たまたま「部活モノ」によって描かれているだけのことだ.


「部活モノ」であろうが,「ファンタジー」であろうが,
自分の問題が描かれている場合,その作品を好きだ,
より正確な言葉を使えば,参考になるということになるのだろうけれど
その問題を抱えている,と告白しているのと同義になる.


別に個人情報を隠したいからではなく,
その問題を抱えているということを告白するのは,
なんか自分の中を覗かれるみたいで,恥ずかしいのだ.


しかも,自分に触れるためには,自分とその作品だけではなく,
出会うタイミングも重要になってくる.
一生同じ問題を抱えているわけではないから.


恥ずかしいだけなら良いのだが,
私の個人的な事情で善し悪しを語ることになるから,
読んでいるオーディエンスの参考になるとは思えない.
役に立たないものを公開してしまっているのではないだろうか,
そういう気がしてならないのだ.


ちなみに,今,会社員なのであれば,「会社モノ」の方が
受けるような気がすると思うかもしれない.
だけど,それはちょっと違う.


会社員の僕にとって見れば,
「会社モノ」は確かに,同じ「会社」をモチーフにしているので,
その点ではより具体的なのだけど,だからこそ,
あまりに具体的すぎて自分に適応できない可能性が非常に高いのだ.


その意味においては,「歴史小説」や「部活モノ」は,
総論賛成レベルでしか参考にしかならないかもしれないけれど,
そこから考えて何か示唆を得ることは十分できる.


作者が考えている,この世界はどうあるべきか,は別にして,
その作品から,人生のヒントを受け取れたとき,
その作品には心から感謝したい.


今まで語った中には,評論家のようにコメントした作品もある.
そういう作品は,残念ながら,自分に触れることの無かった作品だ.
たとえ,歴史上に名を残す作品であっても,
僕の心の中に残ることは,おそらくないだろう.


その作品を語っているのだけど,実は,自分自身を語っている.
だけど,評論家でコメントしている作品より,
語りたい作品であることもまた,間違いない.

*1:もちろん,このぶろぐ上での「かいけつゾロリ」のように,語りにくくない作品もある.まあ,会社では語りにくいんだけど.

*2:好きになった,ということ