ドラクエ8もう少し詳しいコメント
RPGばかりではなく,もはやゲームの代名詞的存在になっているゲームの最新作.こんなことをあえて二川項が紹介する必要もないだろう.前回ドラクエ5を紹介したときに,ドラクエ8が岐路に立たされていると書いたが,プレイ後それは僕の杞憂だったような気がする.というよりも僕の見方が間違っていたことを実感した.そう,ドラクエには最新技術とかメディア的にどうこうとか,そんなものは無用,マホステなのだ.
■だれでも楽しめる普及モデル■
あるゲームはゲームのオリジナリティを出すために,主人公を百人以上にしてみた.またあるゲームはフルCGの映画を作って大損をこいた.また,あるゲームはファンタジーから暗い近未来に変えてみた.ドラクエに影響されたあるPCゲームは必要以上に物語性を訴えるようになった.まだまだ挙げればきりがないが,とにかく他のゲームは.とりわけRPGと呼ばれるジャンルでは,ドラクエとの差別化が絶対条件だった.
そう考えると,ドラクエは存在しているだけでドラクエである.なんと卑怯な作品なのだろうか.サブタイトルを見よう.「空と海と大地と呪われし姫君」.非常に古典的なタイトルだ.今さら感すら漂う.もはや他のゲームでは,綿密なセグメントでもしない限り,このサブタイトルを付けるのは難しいだろう.タイトルだけではない.中身もそうなのだ.それを可能にするのがドラクエなのだ.
システムも,RPGをやり慣れている方にとっては特に目を見張るものはないだろう.同時に,基本部分ではおおむね無理な制度設計はしていないだろう.金銭的には例によって厳しいのだが,今回は錬金がま*1があるので,それでも困ってどうしようもないということはないだろう.
そういう意味では,ドラクエは尖っていない.特徴もやや薄いかもしれない.だが,その反面システム設計的なミスも少ない.最先端のシステムや理論*2ばかりがゲームの面白さを決めているというわけではない事を示してくれている.まさにゲームの「普及モデル」なのだ.ドラクエのオリジナリティは,多くの人に受け入れられること,そこにあるのだと思う.
■引用の嵐■
と,ドラクエのオリジナリティについてはこの辺りまでまでとして,中身をみてみよう.ナメック星人と一緒にスーパーサイヤ人の主人公たちが繰り広げる冒険物語.つまり,ドラゴンボールの販促作品…というのは半分だと冗談*3としても,この作品には過去のドラクエが引用・関連が至る所に散りばめられている.
まあ,と笑って見過ごせるようなものもあれば,ストーリーの根幹に関わるものもある.引用というレベルを超えて,作品全体が「微笑みがえし*4」みたいなものだ.もう最終作になってしまうのではないか,という不安さえ覚えてしまう.
引用元作品としては,ドラクエ2と7以外の全作を発見することができた*5.だが,僕が見つけられなかっただけで,全作のエッセンスが入っているに違いない.僕は,よく神話世界の無秩序な引用を批判している*6が,ドラクエくらいになると自前で調達できるようになる,ということだろうか.
神話世界だろうが,自前の世界だろうが,引用するということは,引用した作品と引用された作品世界がつながる,ということである.そのことをわきまえて引用しているかどうか,そこが重要なのだと思う.あえてわきまえずに引用する作品もあるが,その場合,世界観よりも大切な価値がある場合にのみ成功する.
ドラクエが過去の作品を引用するとき,それは何のためなのだろうか.ドラクエ3が1のフィールドをそのまま登場させたような,過去の作品とつながる世界の前提はない.また,過去の作品の引用により,ドラクエであるということは感じたが,別の価値がもたらされたということも感じられなかった.前に述べた通り,ドラクエは存在しているだけでドラクエなのだから,あえてここの作品の特徴を引用する意味はあまりなかったのではないかと思われる.
とはいうものの,「微笑みがえし」を知らないような世代の人でも,初めての人でも,十分楽しめる.このあたりはさすがだろう.
■攻略本について■
攻略本も版元直結*7なので記事に安心ができるものの,例によって完全攻略本でないところは悔やまれる.もしくはもっと発売を早めるべきだったのではないだろうか.いささかの不満は残る.とはいえ,この版元攻略本は他の攻略本に比べて,開いたページが閉じにくくなっているような気がする.これは悪いことではない.
上下巻に分けることに賛否両論があるかもしれないが,使い勝手は上下巻に分かれていたほうが良いと思う.まあ,無駄な部分を省いて1冊にしてしまったほうがいいと,いわれれば否定はしないけどね.
■評価■
総合評価:★★★★★☆
ストーリー:★★★★★☆
システム:★★★★★☆
音楽:★★★★★☆
その他私見:★★★★★☆