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電子書籍『After』(全2巻),BookLive!(http://booklive.jp/product/index/title_id/116980/vol_no/001),紀伊國屋書店(https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0012917)などで好評発売中。

プロフェッショナル広報戦略

先の衆議院の総選挙で大勝した自民党の陰の主役,
コミュニケーション戦略チームのリーダーである
世耕議員が書いた戦略的広報についての本です.


大勝した自民党が例に取られていて,
その時,自分もどう動いたのかも考えられる*1ので
素材としてもわかりやすい.


奥行きはそこまで深くないけれど,さすがこの道のプロ,説得力がある.
僕は比較的このコミュニケーション戦略チームに近い仕事をしていることもあって,
参考になる点が多かったです*2


さて先の総選挙では,このコミ戦ではなく別の議論が盛り上がっています.
言わずもがな,ライブドアの一件です.
ちなみに,この本は堀江氏については何も触れられていない.*3


ホリエモン自民党の関係について.
竹中氏や武部氏に騙されたと思っている人は,正直言って
メディアリテラシーが足りないだけのような気が.


だって,政府の言っていること,全部信じているの?
そういう人に限って,マスコミの批判機能も素直に受け入れて,
政府を信用しなかったりする.(例えば,年金とか)
結局それって,八つ当たりなんじゃないの?


まあそうだとしても,この問題に対しての,自民党の対応に今ひとつキレがない.
こんなコミュニケーション戦略チームがいるにもかかわらず.
その理由はこのチーム云々の問題ではないみたい.


その答えを本文から.

広報というのは、悪いものを良いものにすることはできないし、黒を白く見せることもできない。やはり基本的にコアになるメッセージの中身が重要なのである。

(40ページから引用)


さらにはこんなことも.

スキャンダルに巻き込まれる企業はある時期、非常に評判が良く業績も好調。世間のスタンダードよりはるかにに上をいっている.そこで社員や会社が「ウチはコレで大丈夫」と慢心してしまう。

遅れに気づいたときには一大スキャンダルになる

(164ページより引用)


ところで,この本の最大の衝撃は,戦略広報論もさることながら,
実は「おわりに」でした.

「やりたい仕事ができないからとふて腐れている部下」には大きな仕事を任せられません。それでさらに「使えないヤツ」と思われ、ますます腐ります。改革のチャンスなど、めぐってくるはずがないのです。

(181ページより引用)


ここを読んだときに,会社での自分の行動がふっと浮かんでしまった.


こういう成功事例を読むと、
その場で成功事例の表面的な現象をつい追いたくなってしまう。
この本なら、いきなりコミュニケーション戦略チームのリーダーに
なった想定をしてしまう。


でも,それは間違っている.
成功本のスタート以前の,そこに至るまでの過程を意識しないといけない.
ただ偶然にスターやヒーローの座が落ちてくるわけではない.

改革の準備は怠らずに、普段の仕事も手を抜かず、しかし、改革実現のチャンスがきたときは一気呵成に。

(181ページより引用)


そういうことです.


プロフェッショナル広報戦略

プロフェッショナル広報戦略

*1:id:futagawakou:20050911.でも,この日のコメントは自民党の成功というよりも民主党の失敗についてなのかも.ところで,この日のブログを読んだ某課長から,「(二川に)民主党がどうこうと言われてもなあ…」というありがたいコメントを頂きました.今回も懲りずに政治っぽいネタです.

*2:ただ,自民党やNTTのような大組織の方法論をそのまま活用するのは難しいかな.心構えとして,ね.

*3:この本が出たのはホリエモン逮捕の前.コミ戦は堀江氏を使ってどうこう,というのは重要視していなかったようだ.