二項対立
よく,僕は作品を評価するときに,
二項対立の罠に陥っているかどうかをを厳しく見ている.
実はここで語ることが多かったファンタジー系の作品は,
構造的に二項対立をあおりやすいジャンルであるような気がした.
対立のあるファンタジー系の多くは世界を描いている.
現実の対立関係を見ても,対立を越えるのは難しい*1.
世界の場合は,「正義」という答を出さなければならない場合が多い.
どちら側も,いかに自分が正しいか,という議論ばかりをしている.
そうだからこそ,二項対立を越えてほしいと願っている.
その一方で,その罠に陥りにくい作品ジャンルもある.
スポーツだ.試合や競技で対立するのは当たり前.
その対立に正義の概念を前提にする必要はない.
だからこそ,自然に両方の立場を描きやすいのではないだろうか*2.
サンタクロースが歌ってくれた
溜め込んでました第一号.
演劇集団キャラメルボックスの作品ですが,
去年の冬にMXテレビでやっていたのを録画して今さらながら見てみた.
実は演劇をTVで見る,という経験はあまりしたことがない.
そのせいでとても埋めがたい距離感を受けた.
これは,観客と舞台の距離がとても近い証拠だろう.
確かに,その距離感をさっ引いても,十分に楽しい.
話の流れというか雰囲気がすごく自然なのだ.
指向しているものに向かっているのだけど,
それでいて今までの感覚も忘れていない*1.
クリスマスにはもってこいの作品だと思う.
この作品を観たのは…夏だけど.
お勧め度:★★★★☆
*1:演劇に限らず,序盤と終盤で雰囲気が分裂している作品,言い方を変えると,終盤の雰囲気が前半の雰囲気を全てかき消してしまう作品は残念ながら少なくない
かいけつゾロリ たべるぜ!大ぐいせんしゅけん
「かいけつゾロリ」のテレビ放送終了後初の新作.
勢いが無くなってしまったのではないかと心配になってしまったが,
それは杞憂.相変わらずの魅力で,面白い.安心した.
まあ,過去の作品の紹介がたくさんあったり,
大人の事情があったり,小冊子が宣伝だったりするんだけど,
そのあたりも何でもありのゾロリだから,許せてしまうというか,
むしろそれをやってしまうところがゾロリらしいし,そこが魅力でもある.
とは言うものの,いろんなところに配慮しているのもわかる.
その配慮がまた面白かったりする.たとえば,次回作の予告.
「ダイエットのこうかにはこじんさがあります」って書いてある.
次回作は『かいけつゾロリ やせるぜ!ダイエット大さくせん』なんだけど,
きっとダイエットの参考になはならないんだろうなあ*1.
もちろん,ゾロリたちがビリーズ・ブータキャンプとか
やるのかと思うと,それだけで楽しみなんだけどね.
最後に,前にもコメントした『テレビニュースの社会学*2』の中で,
ダイエット特集についての記述があったのを引用して*3閉めることにする.
平日・昼は規範的な身体や食生活を提示し、週末・夜は享楽主義にのっとった過剰や身体や食生活を提示するメディア言説のサイクルが、禁欲であることが求められつつ、消費することも同時に求められる…(中略)…(このように矛盾する言説を)交互に見なければならないというように、オーディエンスのまなざしの文法・方法が統制されていることに注目する必要がある。
原先生のまなざしも単に流行を追っているだけなのかもしれないけれど,
なかなか興味深いものがあるような気がする.
お勧め度:★★★★☆
かいけつゾロリ たべるぜ! 大ぐいせんしゅけん (41) (かいけつゾロリシリーズ ポプラ社の新・小さな童話)
- 作者: 原ゆたか
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2007/07
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仕事は演出力 あなたの「魅力」を引き出す38のヒント
私事だけど*1,最近,とある方にやる気を大幅にそぐような事を言われた.
本人もそれが嫌みだと分かって言っているのだから,
何ともたちが悪いったらありゃしない.
僕は個人的に突っ込まれるのは嫌いじゃない.
だけど,それがこちらをけなすことによって,
本人の自尊心を高めるのに利用されたとこちらが
感じたから頭に来たのだろう.
さて,この本を読んだのはそんな気分だったある日.
この本は傷ついた僕の心を癒してくれた.
特に1章・2章あたりは特に.
書かれていた事であっても,言われているような気がする.
話の内容は,著者のマックス桐島さんが出逢った
ハリウッドの人々の魅力についてである.
残念なのは,僕はハリウッドの俳優をほとんど知らないかと.
知らなくても十分に良いんだけど,
ハリウッド通だったらもっと面白かっただろうに.
さて,この本のタイトルについてちょっと補足を.
「演出」とあるが,これはないものを作り出す「偽装」ではない.
あるものをどう魅力的に見せるかの「見せ方」の問題である.
偽装については一切触れられていない.
そして,「仕事は」である.これは実に惜しい.
もちろん,中ではハリウッドという仕事の場の話が書かれているのは,
間違いないんだけど,仕事だけにとどまることはないはずだ.
人間関係でちょっと疲れたり,自分の行動を直したい時に,
読み返してみたい.そんな一冊.
お勧め度:★★★★☆
- 作者: マックス桐島
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2007/04/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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*1:ええ,いつもです
えらぼーと
毎日新聞のサイトで公開されている
ボードマッチをやってみた.
結果は…一番考え方の遠い党で34%,
一番近い党でさえ52%.しかも一番が2つある.
典型的な無党派(というよりむしろ中立!?)でした.
毎日ボードマッチ
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/senkyo/07saninsen/votematch/etc/
プロフェッショナル進化論
この本に書いてあることを実行するというのに,
ここで紹介するというのはなかなか照れてしまうものがある.
それはとにもかくにも,このブログやサイトのあり方について
書かれているからに他ならない.
名前からして『ウェブ進化論*1』を彷彿させるが,
読んでも似ている部分が多々ある.
ウェブについて書かれているということ以上に,
将来へのポジティブさを強く感じる.
中身は,著者の田坂広志さんを知っている人にとっては,
正直,そんなに大きな気づきはないと思う.
それはこの本の価値がないということなのではなく,
今までの田坂さんの実践が語られているという意味だ.
田坂さんの実践がオープンになっているということもあるだろう.
この本の実力は田坂さんの実力そのものなのだ.
巻末に「自著を通じてのガイド」があるくらいで,
田坂さんが今までいろいろと伝えてきたこと,
そのことが形になって現れていることからもわかる.
ウェブの世界に生きようとしている人はもちろん,
社会で生きる人は一読したい本だと思う.
おすすめ度:★★★★☆(なかなか)
プロフェッショナル進化論 「個人シンクタンク」の時代が始まる (PHPビジネス新書)
- 作者: 田坂広志
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2007/04/19
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*1:id:futagawakou:20060323